「ネット会議サービス」のチェックポイント(前編)

サトリデザインの佐藤皇太郎です。
新型コロナウイルス対策として、在宅勤務やネット会議(オンライン会議)の導入が広く求められるようになりました。すでに導入されている方も、これからという方もいらっしゃると思いますが、新型コロナ問題が長期化することを念頭に、調査や検討を進めておくべきかと思われます。

さて、ネット会議サービスは、すでに何種類も提供されていますし、今後も増えていくと思われますが、どれを選べば良いのか悩みますね。本稿では、どのような観点で選択すべきなのか、をご紹介します。

早速ですが、チェックポイントとしては、
1)無料か、有料か?
2)アカウントの取得が必要か?
3)WebブラウザのままでOKか? アプリのインストールが必要か?
4)参加人数の上限
5)制限時間の有無
6)使い勝手(画面共有、録画・録音、参加者のグループ分け)
7)画像や音声の品質(接続の安定性も含む)
8)セキュリティ問題(設計仕様上のもの)
9)セキュリティ問題(意図していないもの)
といった辺りが挙げられます。以下、より詳細に見ていきましょう。

1)無料か、有料か?
利用者としては無料の方が助かりますが、サービスを提供しているのが営利企業である以上、高度な技術や使い勝手の良さ、他社にない独自性などのアドバンテージには、それなりの対価を要求されるのは当然と言えます。そこそこの品質で良いのであれば無料サービスを、品質の高さを求めるのであれば有料のサービスを選択するのが基本です。
参加人数や制限時間に「しきい値」があり、そこを境に無料と有料をランク分けしている場合もあります。無料と有料の両方あるサービスなら、まずは無料で「お試し」してみて、気に入れば有料プランに変更するといったことも可能です。

2)アカウントの取得が必要か?
ネット会議を実施する際に、参加者全員がそのサービスのアカウントを取得(ユーザー登録)しておくことが必要な場合もあれば、会議の主催者だけアカウントが必要(他の参加者は不要)な場合もあり、さらには、参加者の誰もアカウントの取得が不要なものまであります。本格的な長期プロジェクトならともかく、ちょっとした打合せなのに、参加者に新たにアカウントを取得してもらったりするのは、心苦しいですよね。
ちなみに、全員のアカウントが必要なサービスを利用する場合に、会議の主催者側で(メールアドレスの“新規取得”も含め)参加者全員のアカウントを代行で作成しておき、後日、それらの情報(「このメアドとパスワードを使って!」)を参加者に伝えることで、参加者側の手間を極限まで減らす、という手が使えることもあります。が、その場合は主催者側の手間が増えることになります。

3)WebブラウザのままでOKか? アプリのインストールが必要か?
専用のアプリをインストールして、そこからネット会議に参加するのは、考え方としては分かり易いと思います。専用アプリは高速に動作しますし、自由度が高く、多くの機能を組み込むこともできますから、使い勝手も良いはずです。しかし、その一方で、セキュリティ的には一段階、危なくなります。ソフトウェア(アプリ)のインストールを許可するということは、そのコンピュータ内の様々なところへのアクセスを許可することになるからです。もし、そのアプリにセキュリティホールがあると、最悪の場合、そこからPC内の情報が抜き取られてしまうかもしれません。一方、セキュリティ面を重視するのであれば、Webブラウザ上でビデオ会議を行えるサービスを選択するのも手です。Webブラウザからはコンピュータ内へのアクセスが制限されるので、アプリをインストールするよりはずっと安全です。しかし、Webブラウザ上では動作が遅くなったり、機能面で物足りなくなることもあります。

4)参加人数の上限
これは文字通り「会議に参加できる人数の上限」のことです。基本的には、そのプロジェクトの規模(最大で何人?)で選べば良いのですが、サービスを提供している企業から公表されている上限の人数で快適に会議できるとは限らないので、注意が必要です。例えば、上限が50人と公表されていたとしても、実際に映像・音声ともに綺麗に伝わるのは5〜6人まで、なんてこともあります。これは実際に試してみないとわからない部分です。

5)制限時間の有無
これも文字通り「1回の会議を何分間、継続して実施できるか」を表しています。制限時間が無い(2〜3時間でもOKな)サービスもあります。一方、制限時間が40分なら、そこで接続が切られてしまうので、そのセッションは終了ということになります。ただし、新規の会議を立ち上げて、続きをすることも可能ではあります。

6)使い勝手(画面共有、録画・録音、参加者のグループ分け)
基本的な通信性能(画質・音質・安定性)を除くと、各社で工夫を凝らしている部分といえます。
画面共有とは、ある参加者のPCの画面を(自分の顔の代わりに)他の参加者に見せることができる機能のことです。プレゼン資料を見せるとか、PC上の操作を見せるとか、動画を流す(画質は劣化しますが…)といったことが可能になるので、ネット会議における情報共有の効率が格段に向上します。また、参加者間で1つのホワイトボードを共有できる機能を持ったサービスもあり、アイデア出しのような打合せでは威力を発揮しそうです。
録画・録音機能は、ネット会議の様子をそのまま録画・録音して、保存できるものです。保存期間が切られている(例:1カ月後に消える)もの、保存の容量に制限があるものなど、各サービスによって制約は異なります。あと、参加者を複数のグループに分けて、個別に打合せをさせてから、再度、皆で集まるといった、現実の会議室を模したような「痒いところに手が届く」サービスもあります。こうした機能が無い場合には、グループの数だけ小さな会議を立ち上げて、終了したら再び元の会議に戻ってきてもらうことで代用できますが、あまりスマートではありませんね。

さて、前編はここまで。続きは、来月号の後編をお楽しみに!
と言いたいところなのですが、従来通りの月1回の連載ペースですと、今回の新型コロナ対策に間に合わなくなりますので、今回は特例として、2カ月分を一挙に掲載いたします。後編へどうぞ。

佐藤皇太郎(サトリデザイン