「ネット会議サービス」のチェックポイント(後編)

前編の続きです。

7)画像や音声の品質(接続の安定性も含む)
ユーザーが求める優先順位としては、もっと上なのですが、トピック的には地味なので、ここに挙げておきます。
実は、ネット会議は(技術面でも、インフラ面でも)まだまだ発展途上で、高画質・高音質の通信が安定的に(ブツブツ切れたりせずに)提供されているわけではありません。試してみた方は実感としてわかると思うのですが、現時点では「意外にしょぼい」レベルです。でも、だからこそ、少しでもベターな画質・音質・安定性にはこだわりたいところですね。
ただ難しいのは、マシンの性能やネット環境やその他もろもろの総合的な結果として、画質・音質・安定性が決まる点です。接続し直したら改善したとか、マシンとサービスとの相性問題(?)もあるようなので、「このサービスがベスト」などと一概に結論付けることはできません(ある程度の「傾向」は認められるでしょうけれど…)。これも、実際に確認してみるしか手がありません。

8)セキュリティ問題(設計仕様上のもの)
まず、運用面についてですが、会議ごとにパスワードを設定できるサービスもあります。会議のURL(または、会議を指定する「番号」や「文字列」)だけで会議に参加できるのはお手軽ですが、反面、セキュリティ的には弱くなります。そこで、これらに加えてパスワードも要求するようにすれば、関係者以外の者が会議に入ってくるのを防ぐのに有効です。もちろん参加者は、このパスワードを外部に漏らさないようにする必要があります(当然ですが…)。
次に、技術面についてです。通信内容が暗号化されていれば絶対に安心か?というと、そうではありません。実は暗号化には2種類あるのをご存知ですか?
サービスを提供している会社が「覗こうと思えば覗けるもの」と「覗きたくても覗けないもの」があります。ネット会議サービスを提供している企業の倫理として「覗く」なんてことがあってはならないのですが、前者のように技術的に覗きが可能な「弱い」暗号化であれば、そこから情報が漏れてしまうことは否定できません。一方で、後者のように技術的に覗きが不可能な「強い」暗号化(エンドツーエンドでの暗号化)もあります。

9)セキュリティ問題(意図していないもの)
上記の「8)セキュリティ問題(設計仕様上のもの)」では、パスワードの有無、暗号化のレベルは、そのサービスの設計時点で決まっているものです。つまり、サービスを提供している企業に対して不満を伝えても、「それは仕様です!」(ドヤ顔)と言われて終わり。これは、利用するユーザーに対して「それを分かっていて、利用してるんでしょ! それが嫌なら、他社のサービスを利用したら?」と言っているようなものです。
それに対して、例えば、アプリに内在しているバグ(プログラムのミス)やセキュリティホールの類は、設計時点では想定していないものです。こちらの方は意図していないセキュリティ問題なので、より深刻です。信頼性の低いネット会議アプリがインストールされているPCで、クレジットカードを使ってネットショッピングをしたら、そのアプリが原因でクラッカー(悪意を持ったハッカー)により情報が抜かれていた!なんてことが起きるかもしれません。
信頼性の低いアプリは、そのアプリしか入っていない専用のPCで使う(ネットバンクやネットショッピングには使わない)とか、仮想マシンのゲストOS上で動かすとか、慎重な対応が必要になります。

以上、ネット会議サービスを選択する際のチェックポイントを9つ紹介しました。この業界は進歩が速いので、各社のサービスの現状を紹介しても、すぐに陳腐化してしまうでしょうから、本稿では深入りしません。常時、最新の情報を集めて検討する必要があります。ただ、上記のチェックポイントは 当面は 有効だと思われますので、参考にして頂ければ幸いです。

とは言っても、何もヒントが無いと、どのように現実に応用すれば良いのか、端緒すら掴めないかもしれません。そこで、2020年4月現在の個人的な印象ですが、無料3大サービスについて、一言ずつコメントを残しておきます(最新情報は、各自で確認を!)。

「Zoom」…… 参加者のグループ分けなど、使いやすさや機能面ではトップクラス。しかし「弱い」暗号化であることに加え、セキュリティ面での不備が多く指摘されているので、当面アプリはインストールしない方が良さそう(数ヶ月間は、様子見を推奨します)。すでにインストール済みなら、常に最新版にしておくこと。Webブラウザ版が使えるなら(機能面でも、それで不足ないのなら)、極力、ブラウザ版を使用するのが安全です。

「Microsoft Teams」…… アプリの導入時に苦労しました(私以外にも、そういう方は少なくないようです)。でも、一旦、接続できるようになれば、スムーズに使えます。画質・音質も比較的評判が良いようです。暗号化の詳細は不明。

「Skype」…… 1対1のビデオ通話サービスの老舗。それを複数名に拡張して会議にしているので、効率的には不利かな。1対1なら「強い」暗号化らしいですが、複数名の場合は不明です。これとは別に、ちょっとしたネット会議に便利な「Skype Meet Now」という新サービスが始まりました。「弱い」暗号化ですが、無料で、参加者は誰もアカウントを取得する必要が無く、Webブラウザのままでネット会議が可能(「ゲスト」として参加すれば)なので、個人的にも「Meet Now」には注目しているところです。URLだけでネット会議ができるので、このお手軽さは、試す価値アリ!

最後に、ネット会議サービスを利用する上での Tips です(全サービス共通です)。
スピーカーから鳴らすとか、口から離れた場所にマイクがあるのは音質低下の原因となります。
ヘッドセット(イヤホンとマイクがセットになっているもので、頭に装着する)を使うことを強く勧めます。最低でもイヤホンは必須です!!
ノイズに悩んでいる方は、まず「ヘッドセット化」を。そして、静かな部屋、静かな環境で試してみて下さい。

繰り返しますが、上記の内容は、2020年4月現在での情報です。最新情報は、各自で収集をお願いいたします(本当に移り変わりが速い業界です)。
ネット会議サービスを上手に活用することで、新たなビジネス・ステージに飛躍できることをお祈りしております。

佐藤皇太郎(サトリデザイン